かっかのSS作成部

このブログはオリジナルのショートストーリー(SS)を作成、公開しています。暇つぶし、息抜きにどうぞ!

【恋愛】俺をいじめてくるクラスメイトは婚約者!?

俺の名前は小鳥遊和也。

現在高校3年生の18歳で、彼女いない歴=年齢の陰キャだ。

俺は現在ある悩みを抱えている。

それは、

「あら小鳥遊君、今日もさえない顔で登校とは笑えるわね」

そう声をかけてきたのはクラスメイトの高鳥陽葵(ひなた)、クラスのマドンナであり人気者、成績も優秀という万能人間だ。

「あ、高鳥さんおはよう」

俺は無視するわけにもいかないと一応返事をした。

「昨日の宿題、ちゃんとしてるわよね?」

「う、うん。してきたけど・・・」

「宿題、よこしなさい。」

「なんで?」

「写すからよ!」

そういうと強引にカバンから昨日の宿題を取り出し奪い去っていった。

俺はこの高鳥陽葵が大の苦手だ。

出来れば関わりたくないと思うが、何かあればすぐに絡んでくる。

「はあ、」

教室に入り席に着くなり俺は深いため息をつく。

「おう和也、今日も朝から陽葵さんに何かされたのか?」

教室に入るなり深いため息をつく俺に前の席に座っている斎藤隆哉が声をかけてきた。

明るくリーダーシップがある彼はクラスのムードメーカーであり僕の数少ない親友だ。

「うん、下駄箱に行くなり高鳥さんに絡まれて宿題を奪われたよ。」

ハハハ、と乾いた笑いを上げながら俺は先ほどの出来事を語る。

「そりゃ朝から災難だな。ま、どんまい☆」

「どんまい☆じゃないよ!朝一で憂鬱だよ!」

俺のむなしいツッコミは隆哉には響くことはなかった。

 

昼休み、席でお弁当を広げる僕に高鳥さんが近づいてくる。

「ちょっと小鳥遊君、お使いを頼まれてくれるかしら?」

ほらきたよ。

「いやだ、と言ったら?」

「そうね、きちんと私の言う事を聞くように校舎裏にでも連れて行って徹底的に躾をするわ」

いや、怖えよ!と心の中で思いつつも顔は平静を装った。

「しつけは怖いから勘弁してほしいな・・・」

「そう、なら購買まで行ってチョコレートパンを買ってきて頂戴。」

「そんなの、自分で行けばいいじゃないか」

「いやよ、あんなに人が多い場所に行くなんて」

「俺だっていやだよ!!」

多少抵抗してゴネてみたが結果は変わらず、僕は教室を叩き出された。

「いてて、乱暴にもほどがあるだろ」

そんな高鳥さんにいびり続けられた1日を乗り越え俺は帰宅した。

夕飯後、俺は部屋に戻ろうとしたところを父親に止められた。

「和也、話があるんだ」

「どうしたんだ親父、そんなに改まって」

珍しく真面目な顔をする親父を不思議に思いつつも促されるままにソファへと座る。

俺の前に座る両親、いつになく深刻な顔をしている。

「そんなに深刻な顔して、何かあったのか?」

俺は緊張感を和らげようと声をかける。

「和也ってば高校3年生にもなって色恋沙汰どころか女の子のおの字も無いでしょ?母さんたちこのままだと和也は一生童て・・・いえ、一生独身のまま孤独死するんじゃないかと心配になってね?」

「真剣な表情の割に悩みがしょうもないんだけど!?」

俺は立ち上がり深刻そうに話す母さんにツッコミを入れる。

って、誰が一生童貞だこらぁ!!

 

「お前はこのままだと、妖精、いや大賢者まっしぐらだぞ」

親父が続けざまに言葉を投げかける。

「余計なお世話だよ!!」

どうやら両親は頭がくるってしまったらしい・・・。

「そこでだ、俺達には昔から仲が良い友達がいてな?いつか自分たちの子供を結婚してくれるといいなと話し合ってたんだ。」

迷惑すぎるだろ・・・

「もちろん、子供の将来を縛り付けるつもりはなかったし、18歳になった時に恋人がいればその恋を優先するつもりだった。」

「しかし、両方の子供とも恋人どころか浮ついた話もないと。それで父さんたちは子供同士を婚約させてしまえと思ってな!」

「いや、思うなよ!馬鹿なの!?どうかしちゃったの!?」

どうやら両親は頭がくるってしまったらしい(2回目)

「今日はその友人のお子さんに来てもらったんだ。ちなみにその子はこの話を知ってるし、了承済みだ。」

「いや、知らない人との婚約を了承しちゃダメだろ!しっかりしてその人!!」

俺は追い付かないツッコミ業務に全力を注ぐ。

「じゃあ、入ってきたまえ」

ギャアギャアとツッコミを入れる俺を他所に親父はリビングに招き入れる。

ガチャっとドアを開けて入っていたのは予想外の人物だった。

「・・・・・・隆哉」

「えっと・・・幸せにしてね???」

もじもじとしている隆哉、ゲラゲラ笑い転げる親父、なんだこれ。

「なんだこれ・・・・」

俺の予想通りの反応だったのかゲラゲラと隆哉も笑い始めた。

「ヒーッ、ヒーッ、お前の婚約者は隆哉君じゃないぞ。あ~、腹痛い。」

「悪い悪い、遊びに来たらまさかのタイミングだったからつい・・・。」

親父と隆哉は交互にそう告げる。

「じゃあ婚約者は誰だよ!?」

俺はたまらず声を上げた。その時、新たな人物がリビングに入ってきた。

爆笑しながら・・・

「あ~、面白いわ。それにしても小鳥遊君、ツッコミは元気なのね。」

ケラケラ笑いながら入ってきたのはなんと高鳥さん

「高鳥さん?どうしてここに?」

俺は状況が追いきれずに高鳥さんに尋ねる。

「私が君の婚約者なのよ、小鳥遊君。」

「え・・・」

俺は驚きを隠せない。

まさか、大の苦手な俺をいじめてくる人物が婚約者で、高鳥さんはそれを了承しているなんて。

俺の今までのテンションは急降下し、青ざめていた。

「まさか、2人が同じ高校、しかもクラスメイトだったなんてなぁ。こんな偶然あるんだな」

落ち着きを取り戻した親父はそう語りかけてくるが、俺の耳には入らなかった。

 

全員が落ち着いたところで、改めて婚約について聞いてみた。

何故か隆哉もいるがこの際はもうどうでもいい。

 

高鳥さんによると、1か月ほど前に同じ話を両親から聞いており、婚約の相手が俺という事も告げられていたそうだ。

それを知ったうえで彼女は同意したのだという。

「なんで?」

俺は素直に疑問を持ちかけた。

「得体のしれない相手よりも顔も名前も知っている人なら安心じゃない?」

そう告げる彼女の表情はうそをついているようには思えないほど笑顔だった。

「お前はどうなんだ?こんなかわいい子が婚約者じゃ不満か?」

俺はこの子に散々イジメられてるからいやだ、なんてとてもいう気になれない。

しかし、婚約に同意もしたくない。

「ちなみに、今回の話を断ると次のお前の婚約者は犬だ」

「犬うううう!?」

親父の横にはなぜか犬が座っている。どこから連れてきた。

「はあ、分かったよ。その話、乗るよ」

色々と諦めた俺はしぶしぶ同意することに。

「よかったわ~。じゃあ二人とも、引っ越しをするから週末までに準備をしておいてね?」

「引っ越し??」

「えぇ、来週から2人は同じ屋根の下で暮らすのよ。2人きりでね。」

母親は笑顔のままそう告げる。

「いやいやいや、無理だろ!いろいろな面で無理だろ!!!」

俺はさすがに拒否反応を示す。

当たり前だ、いくら苦手な子が婚約者とはいえ男女2人が同じ屋根の下、俺の身にどんな事が起こるかわかったもんじゃない。

「心配ない、お前はヘタレだから陽葵ちゃんに手を出すことなんてないだろうし、もし手を出しても大歓迎だ!」

「違う、そうじゃない」

俺はもう何を言っても無駄だと悟りを開いた。

「高鳥さんはそれでいいの?」

助け船のように高鳥さんに質問をする。

「えぇ、私は大賛成よ。」

もう駄目だ。

「でも、生活費とかどうするんだよ?俺バイトもしてないんだぞ?」

「その点は心配いらない。俺たちが出すから2人はバイトなどせずに勉強に集中しなさい。ただし、それ以外の家事なんかは当然2人がするんだ。」

なんてこった・・・。

 

週末、俺たちは新居と指定された場所に向かう。

そこには、新築の一軒家が立っていた。

「親父、この家どうした?」

恐る恐る俺は親父に聞いてみる。

「おん、土地買って建てた(`・ω・´)」

そういえば普段のほほんとしてるから忘れてたけどうちの親父地元でも有名な建築士だったわ。

さも当然のように返事をしてくるどや顔の親父にため息をつく。

 

「あとは二人で仲良くしろよ~!俺達はこれからしばらく陽葵ちゃんの両親と海外に行ってくるから!」

「あ、ちょっと待て聞いてねえぞ!!」

その言葉を待たず両親は俺たちを置き車で去っていった。

「高鳥さん、とりあえず家に入ろうか?」

こうなってしまってはもう抵抗などできない、今から俺は高鳥さんと2人で生活をしなければいけないのだ。

「小鳥遊君、どうしてこの話を断らなかったの?」

不安そうな顔をして高鳥さんは聞いてくる。

「うちの親父さ、今回の婚約みたいに言い出したら本当にやりかねないんだ。それに断ったところで何とか言いくるめて結局はこうなったよ。その証拠に知らない間に家まで建ててるんだし」

「でも、本気で断れば無理やりにさせようなんて思わなかったんじゃない?」

やけに聞いてくるな。高鳥さんもそんなに嫌だったのだろうか?

「高鳥さんこそどうなの?俺との婚約あっさり了承したっていうじゃないさ。」

「えぇ、私は昔から貴方が好きだった。だから今回の話を受けたのよ。」

「そうだったんだね・・・・・・。今なんて?」

「私は貴方が昔から好きだったって言っただけよ?まぁ、普段からあんな態度取ってしまったのだから君に嫌われても仕方ないし、断られると思ってた。」

そう告げる高鳥さんの表情は嬉しいような、悲しいような複雑な表情だった。

「今までのことを謝って許してもらえないって言うのは十分わかってる。だから、その償いになるかわからないけどこれからの生活で尽くさせてくれないかな?もちろん、小鳥遊君、いえ、和也君が迷惑じゃなければだけど・・・。」

泣きそうな表情になりながら俺に告げる。

彼女は本気なんだ。

「そんな顔されたら断れないじゃないか。確かに、今は高鳥さんのことを好きになれない。それだけは事実だ。でも、これから2人で暮らしていかなきゃいけないから仲良くしていきたいと思ってるよ。高鳥さんが1人で全部する必要もないからさ、ちゃんと家の事分担してがんばろ?」

俺も彼女の覚悟にはこたえなければならないだろう。

気持ちの答えなんて今すぐ出す必要もない、これからの生活で見つけて行けばいい。

 

俺をいじめてくる大嫌いなクラスメイトは婚約者になった。

俺たちの生活は一体どんな未来が待っているのか。

それは、まだ誰も知らない。