かっかのSS作成部

このブログはオリジナルのショートストーリー(SS)を作成、公開しています。暇つぶし、息抜きにどうぞ!

【怖い話】肝試し

俺の名前は和也、しがない大学1年生だ。

俺は昔から怖い話やオカルトが大好きで、たまたま入学した大学にオカルト研究会なる怪しいサークルを発見した為、即座に入会した。

 

このサークルで活動するメンバーは少なく、俺を含めて4人しか居ないが、地元にある心霊スポットや曰く付きのスポット、また歴史についてと幅広く取材や調査をしており、活動内容や調査した内容についてブログに掲載している。

 

所属するメンバーは俺と同じ1年の香織さん、2年生の海斗先輩と咲良先輩だ。

 

ある日、いつもの様にメンバーと次の活動について話し合ってると、ブログのコメントに目を通していた咲良先輩が口を開いた。

 

「ねぇ、ブログのコメントに取材依頼が来てるわよ。場所は隣の県にある廃病院みたいだけど、地元では有名な心霊スポットみたいね。」

 

この言葉に海斗先輩が真っ先に反応した。

 

「依頼は有難いけどなぁ〜、俺らって地元専門で活動してるじゃん?場所広げたらそりゃネタには困らないだろうけどさ、いつかカバーしきれなくなるんじゃね?」

 

先輩の言う事も最もだが、オカルト好きな俺としてはとても気になる…どうしたものだろうか。

 

そんな考えにふけっていると、香織さんが口を開いた。

 

「そういえば、もうすぐ夏休みだよね?じゃあ、この廃病院は夏休み特別企画って事にすれば良いんじゃないかな?和也君はどう思う?」

 

香織さんは俺に意見を求めてくると、みんなの視線が俺に集まる。

この様子だと俺の意見で決まるのか。

 

「俺も香織さんに賛成かな。ただ、海斗先輩の言うように地元専門で活動してるのも事実だから、今後同じ様な依頼が増えてきても特別企画で採用するのは俺らで選んだ1件だけにすれば良いと思う。それに、ホラー好きな俺は正直めちゃくちゃ気になるし」

 

そう言い終えると、話を聞いていた咲良先輩が結論を出し、場所も大学から1時間程度と言う事もあり、夏休み特別企画という事で遠征が決定した。

 

数日後、いよいよ廃病院肝試し当日となり俺たちは海斗先輩の運転する車に乗り込み、現地へと向かった。

 

事前に所有者への立ち入りと取材許可は取れており、見取り図を基に探索経路も伝えて了承は得ていた。

道中では簡単に役割を担当してそれ以外は雑談をして過ごしていると、あっという間に目的地へ到着した。

 

時刻は午後8時を過ぎたところだが、満月と言うこともあり比較的見通しは良かった。

 

「なんか、想像以上に不気味だね…」

咲良先輩が廃病院を見て、そう呟く。

満月に映し出された廃病院は、より一層の不気味さを醸し出しており、入るのを躊躇うくらいだ。

 

底知れぬ恐怖を感じるままに、確実ライトやカメラなどの準備を済ませて入り口の前に立っていた。

病院は3階建てとなっていた為、2人ずつの2チームに別れて探索をする事に。

咲良先輩、俺チームは階段を登り3階から、香織さん海斗先輩チームは1階から探索をして、逐一状況報告出来るように咲良先輩と海斗先輩のスマホで通話をしながらの探索となった。

 

俺達はまず階段を登り、スタート地点の3階へと向かった。

「こっちはスタート地点に到着したわ、カメラもライトもオッケーよ。海斗、そっちはどうかしら?」

 

「こっちもオッケーだ、それじゃあ、2階でまた合流な。何かあったらすぐ行くから連絡くれ。」

 

海斗先輩の合図と共に探索がスタートした。

 

「外からの雰囲気は不気味でしたけど、中は意外と怖くないと言うか、なんか落ち着きませんか?」

 

3階は病室が並んでいるだけだからであろうか、入り口で感じた恐怖感は無く、居心地が良いとさえ感じた。

 

「和也君、本気で言ってるの?私は早くここを出たいとしか思わないわ。さっきから誰かに見られてる様な気配もするし。」

 

咲良先輩がそう言った直後、コツコツと誰かが歩く様な気配を感じた。

「先輩、足音が聞こえます。もしかして海斗先輩達もう来たんですかね?」

確かに聞こえた足音は咲良先輩にも聞こえていた様で、すぐ様海斗先輩に確認する。

 

「海斗、貴方達もう3階に上がってきたの?」

そう聞くや否や、海斗先輩からは予想外の答えが返ってくる。

 

「いや、俺達はまだ1階の診察室に入ったところだぞ。それよか、お前ら誰といるんだ?」

この質問に俺と咲良先輩は首を傾げる。

 

「誰とって、私は和也君と居るだけよ?いきなりどうしたのよ?」

「いやだからさ、その横にいる和也は誰と話してるんだ?誰か他に居たのか?」

 

何やら話が噛み合わない。

「海斗先輩、俺誰とも話してないですよ?」

「え?」

 

どうやら海斗先輩が言うには、探索をスタートしてからしばらくした後に俺が誰かとずっと話している声が聞こえたと言うのだ。

スマホをスピーカーにしていたので香織さんにも聞こえていたと言う。

 

だが、俺は確実に咲良先輩としか話していないし独り言も言ってはいない。

最初は海斗先輩のいつものジョークかと深く考えない様にした。

 

その後、特にこれといったトラブルもなく、最後のトリとなる地下室へ全員で向かう。

寄せられた情報では地下室が1番有名なスポットであり、最も心霊現象や恐怖体験が多い場所であるとの事。

 

「私、入りたくないかも。」

地下室が近づくなり、香織さんが口を開く。

確かに、ここの雰囲気だけは明らかに他と違う。

まるで人を拒絶するかの様な気配を感じた。

 

「でも、調査に来た以上行くしかないわ。ただし、危険と判断したらすぐに出るからそのつもりでいてね?」

咲良先輩はニコッと笑いそう香織さんに告げ、安心させるためにギュッと手を繋いでいた。

 

なんて頼りになる先輩だろうかと感心していたら、海斗先輩が口を開く。

「なあ和也、俺達も手を繋いだ方が良いのか?」

その言葉に全員から冷たく向けられる視線、良い雰囲気が台無しだ。

 

ニヤけてふざける海斗先輩は咲良先輩によって先頭に立たされ、俺達は地下室の奥へと進む。

各部屋で写真を撮影しながら進んでいた時だ。

前方から、コツコツと3階で聞いた様な足音が聞こえ、俺達は立ち止まる。

 

「おい、今足音が聞こえたぞ。」

先頭を歩いていた海斗先輩含め、全員足音を聞いていた。

しかし、足音はすぐに消え他に気配もない事から俺達は慎重に探索を進める事にした。

 

最後の部屋の前で立ち止まる俺達。

「ここが最後の部屋か、みんな覚悟はいいか?」

海斗先輩の問いに頷き、みんなは部屋に足を踏み入れる。

俺はふと何の部屋か気になり、扉に隠れていた部屋の名前を見てゾッとした。

霊安室…」

 

全身の鳥肌が立つのを感じたが、みんなと離れてはぐれてはいけないと後を追った。

 

探索や写真撮影を一通り終えて戻ろうとした時、海斗先輩が叫ぶ。

「おい咲良、香織ちゃんはどうした?」

「いきなり何よ、香織ちゃんなら手を繋いで…あれ?香織ちゃん?」

 

いつの間にか香織さんが居なくなってる。

「馬鹿野郎、なんで手を離したんだよ!」

「違う、今の今までずっと手は握ってたのよ!」

食い違う海斗先輩と咲良先輩の会話。

いや、そもそもいきなり居なくなったなら何故俺は気付かなかった?

俺は3人が見える1番後ろ位にいたし、目を離したとしてもほんの一瞬、その間に何処か行ったなら嫌でもわかるはずだ。

何より、香織さんはいつから居ないんだ?

 

「とにかく、香織ちゃんを探すぞ!」

その言葉にハッと我に返り、俺達は各部屋を回りながら香織さんを探すが、どこにも居ない。

 

「ここにも居なかったわ…。」

最後の部屋を確認した咲良先輩から返答がくる。

ホントにどこに行ったんだ…

その時、コツコツと鳴り響く足音、その直後、1番奥の部屋からキャーと言う叫び声が聞こえた。

「香織ちゃん!?」

そう叫びながら真っ先に駆け出したのは咲良先輩。

俺達も不気味な足音に恐怖しながらも咲良先輩の後を追った。

 

霊安室に戻ると、端っこで疼くまり泣いている香織さんを咲良先輩が抱き締めていた。

「香織さん、何があったの?」

そう尋ねると、香織さんは泣きながらも怒った強い口調で俺達に言い放つ。

「こんな場所にいきなり1人置き去りにするなんて酷いじゃないですか!!足音聞こえたと思ったらいきなり扉閉まって開かないし誰かに掴まれるし、最悪ですよ!!」

 

咲良先輩が宥めるもかなり怖かったであろう香織さんは俺たちにキッと厳しい目線を向ける。

 

「香織ちゃん、あなたずっとこの部屋に居たの?」

「えぇ、ちゃんとみんなと居ましたよ。私カメラ担当だから咲良先輩が手を離したタイミングで部屋をぐるっと動画で撮影したんです。

それで振り返ったら誰も居なくて…」

 

どう言う事だ?

俺達が遭遇した場面と同じタイミングで香織さんは全く別の事を話してる。

 

とりあえず、ここに居ても埒が開かないと俺達は車へ戻る事にした。

帰りの車の中で落ち着きを取り戻した香織さんは再度状況を説明するが、内容は同じだった。

 

説明を終えた香織さんに、咲良先輩が俺たちの状況を改めて説明した。

香織さんが突然居なくなり最後の部屋を含めて探し回った事、足音の後に叫び声を聞いて駆け足で戻って香織さんを発見した事。

あまりに食い違う話に香織さんは疑問を抱いていた。

置き去りドッキリされたと言う印象があったのだろう。

 

後日、俺達は香織さんが撮影した動画と、最後尾で俺が撮影した動画を見比べた。

 

俺の動画には最後の部屋を全員で探索した後、海斗先輩が叫ぶ様子や探し回る様子が映されており、俺達の話が事実である事を物語っていた。

 

俺が撮影した動画を視聴し終え、次は香織さんが撮影した動画を視聴する。

当然ながら冒頭から中盤付近は画角こそ違えど俺が撮影したものと同じシーンだ。

 

しかし、そんな動画でも香織さんの撮影したものは、俺達が明らかに違和感を感じる程おかしかったのだ。

 

所々で入っている呻き声や足音、そのタイミングで写り込むノイズやオーブの様な浮遊物、同じ場面を撮影したとは思えない程違いがあった。

 

そして、問題のシーンがやって来た。

香織さんが部屋を一周撮影し、俺達が居た方を映すと、誰も居ない。

動画の中ではあれ?やみんな、どこ?と言った不安そうな香織さんの声が響くだけで、俺たちの姿はどこにもない。

すると、コツコツとまた足音が聞こえ、その音に反応した香織さんは咲良先輩?と声をかけるが返事は無い。

 

その直後、砂嵐の様な大きなノイズが一瞬入った瞬間に、男性の呻き声の様な音が入っているのだ。

しかし、撮影した香織さんはパニックになっていたのかこうなっていたことに気付かなかったと言う。

 

すると突然、バタンと大きな音がなり響き入り口の扉が閉まった。

さらにパニックになる香織さんに追い討ちをかける様に、先程動画に入っていた呻き声が更に大きく入っており、香織さんにも聴こえていたのか立ちすくむ。

 

その後、ドンドンドンと入り口の扉を強く叩く音で恐怖がマックスになった香織さんはキャーと叫びうずくまる。

 

嫌、触らないで!と更にパニックになる動画の中の香織さんはカメラを床に落としてしまう。

そのカメラが捉えた香織さんの状況に俺達はゾッとした。

 

そこには、カメラの前でうずくまる香織さんに群がる多数の手と、恨めしそうに見つめる複数の顔が写っていた。

 

直後、バン!と大きな音がして咲良先輩が香織さんに駆け寄り抱きしめる様子が映し出され、カメラはバッテリーが切れたのか動画は終わった。

 

「なんだよこれ…」

俺は見終えると同時に冷や汗をかきながらボソリつぶやいた。

香織さんは真っ青になり震えて、咲良先輩が抱き締めている。

 

そこで、1人冷静な海斗先輩がふと呟く。

「咲良はいなくなった時まで手を繋いでたんだろ?」

「えぇ、確かに手を繋いでた感触はあったし、離していたら流石に分かるはずだけど…」

確かに当日もそんなことを話してたっけ。

 

「でも、香織ちゃんの動画だと部屋に入ってすぐに手を離してたよな?」

そう言いながら俺の動画を再度見返す海斗先輩。

 

そこには、確かに手を繋ぐ咲良先輩の手元が一瞬だがしっかりと撮影されていた。

しかし、この時香織さんは辺りを撮影していたのだ。

 

「咲良、一体誰と手を繋いでたんだ…?」

 

この後俺達は調査した記事をまとめてブログに動画と共にアップした。

記事は好評であり、コメント欄でも考察する人やフェイクだと批判する人、多数の意見が争っていた。

 

あそこには何かがある、俺はそう確信している。

何故なら、俺達は実際にその場面に遭遇してしまったのだから。

 

後日談

俺達はブログのアップを終えた後、しっかりとお祓いをしてもらい、今も元気に活動している。

 

香織さんも数日は元気がない様子だったが、今ではすっかり元気を取り戻している。

あんな怖い思いしたらもう懲り懲りだろと思うだろうが、俺達はオカルト研究会だ。

次なる調査対象を選ぶべく、今日も仲良く4人で活動している。