かっかのSS作成部

このブログはオリジナルのショートストーリー(SS)を作成、公開しています。暇つぶし、息抜きにどうぞ!

【スカッと】やたらと絡んでくるうざい同僚を趣味で返り討ちにした

俺の名前は和也。

IT企業に勤める会社員だ。

入社3年目でようやく仕事を覚えてきた俺にはある悩みがある。

それは・・・。

 

「おい、和也。この資料やっといてくれよ。」

今話しかけてきた同僚、浩史の事だ。

「お前の担当だろ、自分でしっかりやれよな。」

俺は浩史から投げ出された資料を突き返す。

「おいおい、社長息子の俺に口答えするのかよ?親父に言いつけるぞ。」

そう、浩史は社長息子であり、将来的にはこの会社を背負っていくだろう人物だ。

なのだが、それをいいことに社内では我が物顔でやりたい放題。

社長息子という事もあり上司もうかつに口を出せないでいたのだ。

 

「じゃあ、俺は帰るから明日までにそれ宜しくなぁ」

そういいながら資料を俺のデスクに放り投げ、手をひらひら振りながら去っていった。

「あの野郎・・・何々、ってこれ明日の会議で使うやつじゃないか!」

あいつ、寄りにもよってとんでもないものを投げつけてきたものだぜ。

ため息をつきながらも俺は仕方なしに資料を作成した。

 

「やっと終わった~、もうこんな時間じゃないか。」

気が付けば夜の10時過ぎ、必死で資料を作ったおかげで何とか作り終える事が出来たのだが、予想よりも遅い時間になってしまった。

「はあ、帰ったら週末のサバゲーに向けて銃のメンテナンスをしたかったんだがなぁ。」

独り言をつぶやきながら俺はオフィスを後にする。

 

陰キャである俺の数少ない趣味はサバイバルゲーム、週末に時間があれば近くにあるサバイバルゲームフィールドに訪れては楽しんでいた。

最初は1人で飛び込んだサバゲーの世界だが、フィールドのオーナーや常連さんのおかげで楽しさを知り、いつしかのめり込んでいた。

サバゲーのおかげで友人もでき、今ではゲームを楽しむ傍らで休憩中に仕事の愚痴なんかを言ったりととても楽しい時間を過ごしている。

 

帰宅した俺はシャワーを浴び軽く食事を済ませる。

銃のメンテナンスは出来ないが、週末が楽しみすぎて気が付けば銃を手に取り抱きしめながら拭きあげていた。

うむ、我ながら変態だな。

 

愛銃をピカピカにして少し満足したので俺は床に就くことにした。

 

翌日

「よう和也、昨日の資料できてるか?」

朝一で浩史がニヤニヤしながら近づいてくる、正直殴りたいぐらい腹立つ。

「あぁ、何とか終わらせたよ。」

「サンキューな」

浩史にしては珍しくお礼を言ってくるではないか、もしかして週末は雨か?

「そういえば、和也サバゲーが趣味だって?」

資料を確認しながら浩史は聞いてくる。どこからその情報を得たのやら。

「そうだな。今週末も行こうと考えているところだった。」

「そのサバゲー、俺達も連れて行けよ。」

なんと、浩史がサバゲーに連れて行けというではないか。

「いきなりどうしたんだ、サバゲーなんてしたことあるのか?」

俺は突然の申し出に驚いた。

「いや、サバゲーなんてしたことはねぇよ。」

「じゃあなんでまたいきなりサバゲーなんか行こうと思ったんだ?」

「いやな、俺バトルロワイヤルゲーム結構やりこんでてるからサバゲーでも強いだろうと思ってな。だから社内でバトロワしてるメンバーを集めてサバゲー行こうと計画したんだ。」

「そりゃあ構わないが、ゲームとサバゲー結構違うからそう簡単にいかないぞ?」

俺もバトロワゲームは暇なときにプレイしているのである程度知っているが、だからと言ってサバゲーが強いとはならない。

「は、言ってろ。お前をぎゃふんと言わせてやるよ。」

「わかった、じゃあこの場所にサバゲーフィールドがあるから当日朝9時に来るといいよ。装備は持ってないんだろ?」

「持ってないな。もしかして、装備なければ言っても無駄なのか?」

「いや、レンタルがあるから大丈夫だが予約が必要なんだよ。人数を教えてくれ。」

「10人で行くことになってる。予約はお前に任せたぞ。」

「分かった。俺から予約しとくよ。」

どうやら本当に来るようだ。

浩史はいう事を伝えると資料を持って立ち去って行った。

 

そして日曜日、浩史たちは集合時間ぴったりに来ていた。

俺達常連組が先に受付を済ませてから自前の装備の準備や弾速の測定をする。

浩史たちは初めての為銃の扱いから基本的なルール、注意事項を聞いている。

 

ゲーム開始前にチーム分けをすることになった。

「俺たちはこのメンバーでやらせてくれ。」

浩史たちは自慢げな顔をしている。

どうやら連れてきたメンバーでチームを組みたいようだ。

幸いにも俺達常連組も10人、チーム分けに支障はなかった。

「ゲーム高ランクの俺達でお前たちをボコボコにしてサバゲーがちょろいことを証明してやるぜ。」

声高らかにそう宣言する浩史、ニヤニヤしている取り巻き達。

それを見た常連は火が付いたのか、ニコニコしてがんばれと言っているが目が笑っていなかった。

浩史たちは知らないのだ。

このフィールドにいるサバゲーマーが全国クラスの猛者であることを。

 

いよいよゲームが始まる。

通常のサバゲーであれば自分の体や銃などに弾が1発でも当たれば死亡扱い、復帰することは出来ない。

だが、今回のゲームはカウンター戦。

お互いの陣地にカウンターが置いてあり、弾が当たり死亡したプレイヤーはカウンターの数字を1つ増やすと復活する事が出来る。

制限時間内に敵のカウンターが味方のカウンターより多ければ勝利となる。

 

ゲームルール説明の後、各チームの陣地に分かれて装備やゴーグルの最終確認が行われた後、ゲーム開始のホイッスルが鳴った。

このフィールドは森の中にあり、左右は森、中央は大量のバリケードエリアとなっている。

常連チームはスナイパーが森へ、アサルトライフルサブマシンガン装備の人はバリケードエリアで迎え撃つことになった。

ちなみに、サバゲーで使用する銃ではスナイパーライフルだからと言って他の銃と弾の飛距離が大きく変わることはない。

しかし、射撃音が静かであり位置を特定されにくいというメリットがある。

デメリットは連射が利かないため位置を特定されて集中砲火を食らったら成す術がなくなるという点だ。

 

俺はアサルトライフルだが、バリケードエリアにはいかず森に入りスナイパーの援護をすることにした。

森の中をある程度進んだところで敵を偵察する。

どうやら敵は森にほとんどの人員を割き、バリケードは手薄なようだった。

だが、それが命取りだ。

浩史たちは次々とスナイパーに撃ち抜かれていく。

森は厄介だと判断したのか次はバリケードに進み始めた。

数名森に入ろうとしてきたので俺は射撃をして森に入らないように威嚇、隠れきれてない敵は撃破していく。

次第に森のスナイパーも浩史たちを包囲するように位置取り、敵は完全に陣地とバリケードの間でくぎ付け状態となってしまった。

 

「こんなはずじゃねぇ、こんなの聞いてねぇ!!」

必死になって叫ぶ浩史の声が聞こえる、いい気味だ。

「おい、浩史どうすんだよ?なんか作戦ねえのか?」

「うるせぇ、言ってる暇あるなら撃ち返せよ!!」

とうとう、どうにもならなくなった浩史たちは仲間割れを始めてしまった。

 

あっという間にゲームは終了、3対45という圧倒的な差をつけて常連チームの勝利となった。

 

「なんでだよ、ゲームじゃこんなことにならねぇのに」

すっかり落ち込んでいる浩史たちチーム、どうやらサバゲーの難しさを思い知ったようだ。

「どうだ?ゲームとは全然違うだろ?」

いたたまれなくなった俺は浩史たちに声をかける。

「悔しいが、お前の言うとおりだった。悪かったよ、いろいろと・・・。」

浩史は懲りたようで素直に謝ってきた。

「分かってくれたならよかった。けどな、俺たちはせっかく来てもらった浩史たちにもサバゲーを楽しんでほしいと思ってるんだ。どうだ?チーム編成考え直して楽しんでみないか?」

「いいのか?散々馬鹿にした俺達だぞ?」

「誰にでも思い込みはあるもんだ。だからって責めたって何にもメリットはないだろ?俺は純粋にサバゲーを楽しみたいんだよ。ここにいる人たちもな。それに、サバゲーしている人はまだまだ少なくてさ、1人でも多くの人にサバゲーの楽しさを知ってほしいって願いも持ってるんだ。」

俺の正直な気持ちを聞いていた常連やオーナーさんもうんうんと笑顔でうなずいている。

「ありがとう、俺達も純粋にサバゲー楽しみたいと思ってきたよ。」

 

その後、俺たちは何度かチーム編成を変更しながら様々なルールで思い切りサバゲーを楽しんだ。

この雰囲気にすっかりテンションが上がったオーナーが提案したド畜生なスパイ戦までは・・・。

 

スパイ戦、それは味方の中に敵が指名したスパイが数名潜んでおり、オーナーの行動開始の合図とともに内部から撃破されていくという恐怖のゲームだ。

スパイは行動開始後に気付かれることなく味方を撃破する必要があるし、スパイ以外は誰がスパイかわからないという状況におびえながらも敵を撃破しなければならない、まさに悪魔のゲームである。

 

ゲーム終了後、俺たちは人を信じる事が出来なくなっていた。

「スパイ戦怖え、なんで隣でニコニコしながら進軍してたこいつがスパイなんだよ、やべぇだろ」

浩史はおびえていた。

「どうした、大丈夫か?」

「ひぃっ!!撃たないでくれ!!」

そう、俺がチーム内のスパイだったのだ。

まさか、浩史も俺がスパイと思わずにともに行動していたところ俺に撃ち抜かれるとは思わなかったらしい。

「もう撃たないから心配すんなよ」

俺はゲラゲラ笑いながら浩史に告げる。

「全く素振り見せないとか、お前演技力高すぎだろ。」

未だに怯えながらも浩史は告げる。

「けっけっけ、ノコノコついてきやがって」

俺はニヤニヤしながら浩史に告げる。

「この外道が!!!!」

浩史は叫んだ。

 

これでこの前の資料の件もチャラにしてやろう。

浩史たちすっかりサバゲーの楽しさにハマったようで、次いつ行こうかという話や銃どれがいいかなどと盛り上がっており、常連さんの銃を撃たせてもらったりと各々でた惜しんでいるようだった。

 

以降、社内でも浩史の態度は大きく変わった。

これまで我が物顔だった態度はすっかり変わり、チーム内でしっかりとコミュニケーションを取りながら仕事に取り組むようになった。

この大きな変わりように上司や他のメンバーも唖然としていたが、相変わらず俺を見るときは疑いの目をかけてくる。

そんなにスパイ戦がトラウマなのかよ・・・。

 

どうやらサバゲーを楽しんだことでチーム内で連携を取ることの大切さも同時に学んできたようだ。

「おい和也、今週末サバゲー行くのか?」

打ち合わせが終わりデスクに戻った俺に浩史は問いかける。

「うん、行こうかなって思ってる。浩史も銃買ったんだって?」

サバゲーの後浩史たちはお気に入りの銃を見つけたようで購入したようだ。

「おう、次のサバゲーがデビュー戦よ!」

新しい銃を手にしたことでテンションがかなり上がっているようだ。

俺も自分の銃を手にしたときはこんなだったなぁと懐かしむ。

「次のサバゲー、楽しみだな!」

「おう!・・・お前、スパイじゃないよな?」

「さあ、どうだろうなぁ~?」

「もう勘弁してくれ・・・・。」

俺たちはハハハと笑いあう。

 

さて、次はどんな事があるだろうか。