【家族愛】コミュ障から就活に失敗し家族から追い出された俺、しかしある方法で見返しに成功!
俺の名前は和也。
現在18歳の引きこもり、いやニートというべきだろうか。
俺は昔から他人のコミュニケーションをとることが大の苦手だった。
話したいとは思っているが人を前にしていざ話そうとすると緊張してなかなか言葉が出ないのだ。
そんな性格が災いして学生時代は中々友人が出来ずに孤立もしていた。
それだけではなく、人生の中で大切なイベント「就活」さえも失敗してしまったのだ。
成績はそれなりで働きたいと思った仕事もあった。
しかし、面接で上手く話す事が出来ずにどこの企業も不合格。
「あんた、その人前で緊張する癖いい加減何とかならないの?
人見知りの限度をはるかに超えてるじゃない」
ふさぎ込む俺に追い打ちをかけるようにそう話しかけてきたのは俺の母親。
「言われなくてもわかってるんだよ!!」
俺はやり場のない怒りを抑える事が出来ずにそう母親に怒鳴りつけ、部屋に飛び込み思い切り扉を閉めた。
そこから、俺はほとんど部屋から出ることなく生活をしている。
そして、引きこもりになって3か月が経過したころ、俺は半ば無理やり両親から部屋を出され、リビングに連行された。
テーブルに座り俺と正対する両親。
重苦しい雰囲気の中、父親が口を開いた。
「お前のコミュニケーション能力のなさはひどすぎる。
しかし、これ以上家の中でお前の面倒を見ることもいい加減辞めなければいけないと俺は考えている。」
「それってどういう・・・」
言い終わらないうちに父親は続ける。
「1か月期間をやる、それまでに仕事を見つけて来い。それまでは家に暮らしていい。
だが、1か月後にお前にはこの家を出て行ってもらう。たとえ仕事が見つからなくとも、だ。」
父親はまっすぐに、しかし冷たい目で俺にそう言い放つ。
「・・・・わかったよ。」
俺は家族にすら見放されたのだ。
そりゃそうだ、こんな仕事もしないニートの息子なんて近所のいい笑いものだ。
そして1か月後、俺は就職先を結局見つける事が出来なかった。
「ダメだったか。しかし、約束を今さら変更することは絶対にない。引っ越しの代金としばらくの生活費は渡しておく。しかしそれが尽きた後どうなろうが俺たちは知らない。自分で何とかするんだな」
父親にそう告げられた俺は、両親が見つけておいたという部屋に引っ越しをした。
それは実家から1時間以上もかかる俺も訪れたことがない田舎町。
俺は新居に到着するや否や乾いた笑いを上げた。
「ははっ、こんな田舎町でどうしろってんだよ・・・」
とてつもない虚無感が俺を襲う。
しかし、勘当同然で追い出された俺は何とかしなければホームレス確定コースだ。
何か俺に残された道はないものかと部屋を見回しながら必死に考える。
ふと、パソコンが目に入った。
そうだ、俺にはパソコンと、もう1つ大好きなものがあるじゃないか!
俺の趣味はゲームだ。
最近ではプロゲームやe-Sports、動画配信などで生計を立てている人が多くなっているというのはニュースなどで見ていた。
「これならできるかもしれない」
俺は人を目の前にすると緊張してしまう。
しかし、顔が見えなければいけるかもしれないと希望を見出した。
いきなりすぐにお金が稼げるなんて考えていないが、何も行動しなければ何も変わらない。
ダメもとだが、パソコンを起動し配信するための環境を整備して、ネットで勉強しながら配信をつづけた。
ゲーム配信のカズゲーミングとして配信を開始。
最初のころは誰1人として俺の配信を見ることはなかったが、それでも俺の心が折れることはなかった。
そんな0人配信が続いたある日、1人、2人と配信を見に来る人がいた。
配信中にリスナーはチャット形式でコメントを送信する事が出来、配信者はコメントを読み上げることやコメントに返事をする事が出来る。
俺は閲覧者と交流しながらの配信が楽しくなり、いつしかゲーム配信にハマっていた。
そうして配信を始めて3か月が経過しようとしたころ、配信を見に来る人は100人を超えるようになっていた。
そんなある日、いつものように配信をしていたところ、新規で配信を見に来てくれたリスナーさんがいた。
「はじめまして、今日初めて配信を見に来ました!」
チャットでリスナーからのコメント。
「お、はじめまして~。来てくれてありがとうね!時間が許す限り楽しんでいってくれよな!」
俺はいつものようにコメントに挨拶を返す。
「カズさんの声、声優の小塚さんに似てない?」
チャット内にそんな文章が流れた。
すると、
「確かに、誰かに似てると思ってたけど小塚さんだ!」
「カズさん、よく来たなぁ!って言ってみてください!!」
俺がゲームをしている最中にチャットコメント内ではそんな会話で盛り上がっており、投げ銭付きのコメントでリクエストが来た。
小塚さんと言えばゲームやアニメでは渋い声と人気の声優だ。
俺も大好きでよく知っているが、まさか自分の声が似ているなんて思ったことも無かった。
俺はチャットで流れてきたリクエストにこたえる。
小塚さんのイントネーションを意識して。
「よう、よく来たなぁ!」
我ながら、少しは小塚さんのイントネーション真似できたかなと思う。
すると、「うおおお!小塚ボイスだあああ!!!」
とチャット内は大騒ぎに。
配信を見ていたリスナーさんがSNSなどで拡散したようで、物まねをした30分後にはなんと5000人を超える人が来ていた。
それから日に日に配信を見に来るリスナーは増えていき、それに比例して投げ銭も多くなっていった。
俺は配信だけでなく、配信したゲームを撮影、編集して動画としてアップ。
配信同様に好調であっという間にチャンネルの登録者数は5万人を超えた。
登録者が多くなったことで広告をつける事が出来るようになり、配信の投げ銭と動画の広告収入が入るようになった。
家を追い出されて早半年、父親から渡された生活費が底をつきそうになる前にある程度の収入を得る事が出来るようになっていた。
1年後、俺はとあるゲームイベント会場に来ていた。
会場に来た目的は新しいゲームを見に来たわけではない。
仕事として来ている。
あれから配信を続けていくうちに企業から声がかかり、新規ゲームの配信などの案件が入るようになっていた。
ゲームの配信やゲーム周辺機器のレビューなど、範囲は多岐にわたるが、顔を出すことなく配信や動画で案件をこなしていた。
そんな時、とある有名ゲーム企業から1通のメッセージが届いた。
「今度、とあるゲームイベント会場でわが社の新作ゲームの発表イベントが行われます。
そこで、新しいゲームのプレイをしていただけませんか?」
正直、俺は断ろうかと考えた。
今まで顔出しNGとしてゲームの配信や動画を出してきた。
今さら顔を出したいとは思わないし、何より人前になると緊張して離せない。
ボロが出てしまってはファンが離れる可能性もある。
交渉の結果、ヘルメットを着用し顔出しなしという条件で出演が決定した。
イベントは盛況のうちに終了。
その様子はネットニュースやバラエティー番組でも取り上げられるほどだった。
数日後、家で配信の準備をしているとスマホが鳴った。
電話の主は父親だった。
「もしもし、久しぶりだね」
正直1年も連絡なかった父親とは話す気もなかったが一応電話には出た。
「和也、久しぶりだな。元気にしているか?実はな、テレビ番組を見てお前を見かけたから連絡をしてみたんだ。この前のゲームイベント、顔は出してなかったけどお前だろ?」
「そうだよ、俺今は家でゲームの配信や動画配信でお金を稼ぎながら企業からも案件を受けて仕事をしてるんだ。」
「そか、お前に合う仕事を見つける事が出来たんだな。」
俺は久しぶりの連絡という事もあり、俺にお金をせびろうとしているのではないかと警戒した。
「実は、今回連絡した理由はだな」
ほらきた、このセリフがあるという事は何か困りごとがあって頼ろうとしているパターンじゃないか。
しかし、父親から放たれた次の言葉は予想を反するものだった。
「今日連絡した時点で何も仕事をしていなかったら俺の下で仕事をしないかという誘いだったんだ。」
「はあ???」
「あの後父さんな、和也がそんな性格になってしまったのは育て方に原因があるんじゃないかって母さんと話して、和也のために何かできることはないかって考えたんだ。」
「父さん・・・。」
「そして先月、俺会社を辞めたんだよ。」
「いきなりどうして!?もしかして体悪いのか?」
「ははは、違う違う。父さんな、会社を作ったんだよ。家族が一緒ならお前も仕事が出来るんじゃないかってな。」
「父さんと母さんは俺を見放したんじゃなかったのか・・・?」
俺はあまりの予想外の言葉を受けて、素直に疑問を投げかけた。
「今回連絡をして、どうしようもなくだらけていたらそれも本気で考えていたさ。しかし、お前がまだ苦しみながら、悩みながら自分と向き合っていたのなら家と俺の会社に迎え入れようと思ってな。」
「そか、ありがとうな。でも、家に戻ることは出来ないよ。」
「そうか、理由を聞いてもいいか?」
「ほんとは、これまで俺を追い出した父さんたちを憎んでいた。でも、自分の配信とか動画を楽しみにしてくれている人がいるのも事実なんだ。だから、俺は1人で出来るところまで頑張って、俺を楽しみに待ってくれている人たちを楽しませたいと思ってる。
それには、賑やかな場所にある実家よりも周りが静かでのんびり配信が出来るこの場所が最適なんだよ。」
「そうか、和也変わったな。」
「うん、もしあの時父さんたちが俺を追い出すなんてしなかったら多分こんなことできなかったと思ってる。だから、ありがとう。」
「悪かったな和也。俺たちはお前を腫れ物扱いのように追い出してしまった。もっとできることがあったはずなのにな。」
「今さら気にしてないよ。それより父さん、会社は順調にいきそうなのか?」
「あぁ、まだまだ課題や問題はあるが頑張ってる和也を見てると父さんも負けてられないからな!」
「歳食ってんだから無理だけはするなよ?なんか手伝えることがあれば俺もたまには手伝うからさ」
「歳食ってるは余計だろ。だがお前は自分のことに今は集中しろ。たまには帰って来いよ?」
「あぁ、時間あるときには帰るよ。」
父さんは俺を勘当したんだとずっと思っていた。
だから収入を得るようになっても俺から連絡をすることなんてしなかったし、今回連絡がなければずっと連絡を取ることはなかっただろう。
そうなっていたら俺は両親の本心を知ることなくずっと憎しみを頂いていたかもしれないし、思いやりに気付く事が出来なかった。
こんなダメ息子のために必死で考えてくれてたなんて、父さんはずるいな。
両親の愛情に触れた俺はいつの間にか涙があふれていた。
近いうちに実家に帰るとしよう。
お土産とお土産話をたくさん持って帰って、家族3人で食卓を囲みながらこれまでのことをたくさん話そう。
そう思いながら俺は今日も配信を続ける。